メルマガ・広報誌

vol.298(7月11日)

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◎ マペラ首相、PNGの投票に真剣に取り組むよう訴え(2022.7.1、笹川平和財団)
https://www.spf.org/pacific-islands/breaking_news/20220701-1.html

【抄訳】
 ジェームズ・マラペ首相は、パプアニューギニアで月曜日(7/4)に投票が行われるにあたり、
投票を真剣に行うよう訴えた。

 選挙運動は今日(7/1)で終了する。

 マラペ首相は、「全国的に選挙戦が終了するにあたり、月曜日(7/4)の投票開始を前に、週末を通して平和と配慮を訴えたい」
「国民が心から祈れば、私たちが誰であろうと、神は聞いてくださる。
神は私たちのすべての動機を見抜き、次の5年間の最高のリーダーによるチームが選挙戦と投票から生まれる。」
「パング党や私を含め、私たち全員が、この国のために最善を尽くしたいと思い、懸命に選挙活動を続けてきた。」
「私は神の意思のために祈り、もし、私のチームよりも優れたチームがあれば、そのチームが昇格するだろう。
これは私のためではなく、国のためであるのだから。」「私たちは、私たちの国家の課題を解決するために、
パプアニューギニアのために最善を尽くしたい。」
と述べた。
 マラペ首相は、また、適切なリーダーシップがある限り、国が直面する課題は克服できないものではないとし、
「リーダー、特に首相になる人は責任を取る立場にあるのだから、このような課題を解決するためにリーダーが選ばれなければならない。」
「我が国に残された課題には、公共サービスのあらゆる階層で蔓延する汚職や、
神から与えられた豊富な資源に恵まれた国であるにもかかわらず、国家の発展が見られないことなどがある。」
「この3年間、パング党率いる我が政権は、不況にあえいでいた経済を安定させ、
国土のあらゆる場所をインフラでつなぐプロセスを開始し、5万人以上の学校中退者に2度目の教育の機会を与え、
大学まで学費を支払い、国民のいる場所に現代的な医療サービスを届けることに力を注ぎ、崩壊した法秩序を修復してきた。」
「私たちは、汚職対策独立委員会を設立し、汚職によって奪われた富を取り戻すための法律を制定するなど、
汚職と戦うために一層の努力をしてきた。これは、私たちの真剣な姿勢を示すものだ。」
「私たちは、中小企業やビジネスを通じて人々が力を発揮できるように、国富からより多くの分け前を取り戻すようになった。」
「この国のために、もっともっとやるべきことが残っていることを認めざるを得ない。」と述べた。

 さらにマラペ首相は、「私が就任するまでの44年間、多くのことが行われなかったとすれば、まだ多くのことが未解決のままである。」
「それゆえ、2022年から未来には、優れたリーダーシップが重要になる。なぜなら、優れた、賢明で、誠実で、
真摯なリーダーシップがあってこそ、国家は進歩するのだから。」「これらの美徳は神のものである。
それゆえ、キリスト教徒は今週末、私利私欲や腐敗よりも我が国の国益を優先させる徳のある指導者のために祈る必要がある。」
「この週末、月曜日に投票が始まる前に、私たちの国のクリスチャンは、国民が良い選択をすることができるように祈る必要がある。」
「その中には、汚職に反対する投票、国の資源をより多く取り戻すための投票、子供たちや人々のためのより良い教育や健康のための投票、
国のすべての地域を主要な近代的インフラでつなぐための投票、そして、誰一人として、またどの場所も取り残さず、
誰もがこの国で繁栄できるよう、より良い法律を保つための投票が含まれている。」 と発言した。

 最後にマラペ首相は、「この訴えを終えるにあたり、神様が皆さんを奮い立たせて、
PNGに仕えるのに最も意欲的なチームを見出すことができるよう祈る。」
「私やパング党にとって、私たちは一生懸命に選挙活動をしてきたが、もし私たちが相応しくないのなら
、私より優れた人物が首相として現れ、我が国のために貢献してくれることを神に心から祈る。」
「もし、私と私のチームが再び選ばれるなら、パプアニューギニアを取り戻し、

最も豊かな黒人キリスト教国家にすることに焦点を当て、誰一人、どこからも取り残されないようにし、
私たちの国が経済的に自立できるよう、力をつけていくことになるだろう。」「これからの礼拝の時間を使って、
私たちの愛するPNGのために神の御心のために祈り、断食しよう。1975年にパング党が私たちに民主主義と主権を与え、
私たちは一つの民族、一つの国民、一つの国家となったのだ。」「選挙戦の埃が晴れた後、私たちが存在するだろう。」と述べ、
選挙キャンペーンを締めくくった。

【コメント】
パプアニューギニアでは5年ぶりの選挙が7/4から始まります。一日で投票が終わる選挙区もあれば、数日続くところもあるようです。
開票は7/29から(本稿執筆時点)と伝えられています。

 今回の選挙は、2019年5月に内閣不信任決議を避け辞任したオニール前首相の後に議会で選出されたマラペ首相にとって、
その政権の信を国民に問う初めての選挙となります。
マラペ首相は、首相就任以前は、オニール首相率いるPNC党(Pepple's National Congress)やNAP党(National Alliance Party)に
所属したこともありますが、
現在、かつて建国の父といわれた故サー・マイケル・ソマレ元首相が率いて1975年の独立時に政権を担っていた
パング党(Pangu Pati)のリーダーとして首相を務めていることは興味深いところです。
 今回のパプアニューギニアの選挙は、小選挙区96議席(今回は7増)と20州・ブーゲンビル自治州・首都圏(NCD)各1議席の22議席、
の計118議席を約3500人(53の政党や無所属)が争います。なお、各州1議席の当選者は州知事も担います。
 投票方法は、Limited Preferential Voting(LPV)が採用されており、
有権者は投票時に候補者に1位から3位まで順位をつけて投票します。

  1回目の開票作業では、1位票を集計しますがいずれの候補者も過半数に満たない場合、
最下位の候補が落選し、落選者に対する投票用紙の2番目の人物に票がカウントされるもので、
これを過半数を獲得する候補者が出るまで繰り返されるそうです。
そのため、最終結果が判明するまで多くの時間を要することになります。
選挙結果が判明すると、英国国王の代理である総督が最大議席を獲得した政党に対し政権樹立を指示し
(過半数を獲得する政党がないため)、最大政党を中心とする連立による議会与党が形成され、最大政党から首相が選ばれます。
また、議会ではたいていの場合、議会与党、議会野党、クロスベンチャーの勢力が作られます。
パプアニューギニアでは議員による所属政党を変える動きが多く、
政党も与党側と野党側の間で動くことがあるため、安定さを欠く面があると考えられます。

 今回の選挙では、マラペ首相のパング党とオニール前首相のPNC党のいずれが最大政党になるのかが注目されており、
それぞれ選挙戦に加え、現地では選挙後の多数派工作が行われており、
パング党、Patrick Pruaitch 氏率いるNAP党(National Alliance Party) 、
William Duma 氏率いるURP党(United Resource Party)が選挙後に連立政権を作るとの報道もありました。
 これは筆者の個人的な印象になりますが、オニール首相は経済開発優先でPNGのマクロ経済は発展させたものの、
富が国全体に行きわたらず、国内の開発格差や経済格差を広げ、UBS(Union Bank of Swiss)に係る問題も指摘されています。
一方で、マラペ首相はTaking Back PNGを掲げ、一部の都市部の発展ではなく、
国全体の発展を描き、富を国民に分配する考えに見えます。
例えば、ポルゲラ金鉱山の採掘権に関し、オニール前首相は金価格が高騰している時代に採掘していないことは
国家経済にとって不利益であるとしてマラペ首相を批判する一方で、
マラペ首相はオニール前首相政権時代の2019年に同鉱山を外国に売ろうとしていたと指摘したり、
地権者への利益確保や環境問題を背景に外国企業への採掘権許可を急がないとするなど、立場の違いがあります。

 パプアニューギニア国民が、故サー・マイケル・ソマレ首相のように広く国全体の発展を目指すマラペ首相と、
マクロ経済・経済開発主導型のオニール前首相のいずれを選ぶのか、あるいは第三極が現れるのか注目されます。
結果は8月中に判明するとみられます。
(塩澤英之主任研究員)

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◎ 米中対立「新前線」独自の安保 南の島、したたか外交(2022.7.5、毎日)
https://mainichi.jp/articles/20220705/ddm/007/030/090000c

 米中対立が激化する中、その新たな「前線」として南太平洋の島々に注目が集まっている。
影響力拡大を図る中国に対し、米国や近隣のオーストラリア、ニュージーランド(NZ)、日本が警戒を強める。
ただ、専門家からは「島しょ国の成り立ちや大国と異なる安全保障観を理解しなければ、
どの国も対応を見誤る」との指摘も聞こえる。南の島の本音とは何だろうか。
旧宗主国と関係深く
 「(中国による安全保障の)新構想はもっと大きな計略の煙幕だ」――。
中国が南太平洋の10の島しょ国に提案した安全保障などに関する新構想が明るみに出た5月末。
ミクロネシア連邦のパニュエロ大統領は豪州やNZ、島しょ国などに宛てた書簡で警戒感をあらわにした。
パニュエロ氏はこの中で「新構想は中国と我々の外交関係を中国のレールに乗せ、
我々の経済と社会をもその関係に縛り付けようとするものだ」と指摘した。

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◎ 豪・NZ、対中で島しょ国と連携強化 首脳会議開幕へ (2022.7.10、 日経)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM07DD80X00C22A7000000/

【シドニー=松本史】太平洋の島しょ国・地域とオーストラリア、ニュージーランド(NZ)が参加する
太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議と関連会合が11日からフィジーのスバで開かれる。
地域で影響力を強める中国を念頭に豪州・NZは安全保障問題を重視、島しょ国との積極的な連携を打ち出す構えだ。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け多くの島しょ国が厳しい出入国規制を導入し、
対面での首脳会議開催は2019年以来約3年ぶりだ。
今回の会議ではソロモン諸島が中国と結んだ安保協定に加え、
中国が国交を持つ島しょ国10カ国に呼びかけた地域を包括する安保協力などが主要議題になる。
豪州のアルバニージー首相は8日、PIF首脳会議について「地域で起きているいくつかの動きについて
豪州の国益と懸念を打ち出していく」との方針を示した。

NZのアーダーン首相も7日、訪問先の豪州で行った講演でPIFに言及し
「(島しょ国)地域の安全保障上の課題は地域で解決することが重要だ」と強調し、中国をけん制した。

中国が存在感を増す中、豪・NZの警戒感を一段と高めたのがソロモンと中国が4月に結んだ安保協定だ。

ソロモンは長く台湾と外交関係を持っていたが、19年にソガバレ首相が台湾と断交し、中国と国交を結んだ。
以降ソロモンは急速に親中姿勢を強めた。安保協定は中国艦船の寄港や中国軍の派遣を認める内容とされる。
ソロモンと同様に19年に外交関係を台湾から中国に切り替えたキリバスでは、老朽化した滑走路の改修を中国が支援する動きもある。
5月下旬の豪総選挙で政権交代を実現したアルバニージー氏は島しょ国との関係を重視する姿勢を示す。
ただ、豪新政権発足直後に中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は豪州の機先を制する形で7つの島しょ国を訪問した。
王毅氏はフィジーに滞在中の5月末、中国と国交を持つ島しょ国10カ国とオンラインの外相会合を開いた。
その際、同氏は地域を包括する安全保障協力を提案している。複数の国の反対で合意は見送られたが今後も議論は続く見通しだ。
中国はこれまでオブザーバーとしてPIFに参加してきたが、今回の首脳会議には代表団を派遣しないと伝えられる。
中国外務省の趙立堅副報道局長は6月下旬の記者会見で「今年は対話を行わないという島しょ国の決断を支持する」と述べた。
一方で豪公共放送ABCは、首脳会議の最終日となる14日に中国が地域10カ国とオンラインでの会合を計画していると報じた。
首脳会議期間中、豪州とNZは中国の動きに神経をとがらせることになりそうだ。

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