メルマガ・広報誌

vol.86 (8月1日)

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◎ 英語が得意な李容浩も、静かな李洙ヨンも結局は「のけ者」 (2016.7.27、中央日報)
http://japanese.joins.com/article/705/218705.html
議長国が主催する夕食会は単にワインを飲んで社交する場ではない。
他国の外相との親交関係、数十人の外相が集まった中で自然に対話を主導する能力など
外交トップとしてのパフォーマンスをのぞくことができる舞台だ。
北朝鮮外相が参加する最も公開的な行事でもある。

昨年8月にマレーシアのクアラルンプールで開催されたARFには
当時の李洙ヨン(イ・スヨン)外相(現朝鮮労働党副委員長)が出席した。
今年、ラオスのビエンチャンには李容浩(イ・ヨンホ)外相が出席した。
2人は現在、北朝鮮外交ラインの2トップでもある。
2年連続でARFを取材し、北朝鮮の2人の外相を夕食会の現場で見ることができた。
会場に現れた李洙ヨン前外相と李容浩外相の最も大きな違いは通訳だった。

李容浩外相のそばには通訳がいなかった。
李容浩外相は母国語のように英語を話すという定評がある。
米国の官僚が非公式的に北朝鮮の官僚に会う時、北朝鮮からは常に2人ずつ出てくるという。
お互い監視しなければいけないためだが、不足する英語の実力も理由だ。
しかし李容浩外相は常に一人で出てきて米国の官僚に会ったという。
外交消息筋はこれを「自信の表れ」と解釈した。
李洙ヨン前外相は夕食会で常に後ろに通訳が座って説明した。
司会者が英語で冗談を言うと、周囲より遅れて笑った。
当時ARFに出席した政府関係者は「英語とフランス語ともに流ちょうだと聞いていたが、
英語で進行された他の会議でもずっと通訳がついているのを見るとそうではないと感じた。
スイスで長く勤務したため、やはり英語よりフランス語が理解しやすいようだ」と語った。
李洙ヨン前外相は夕食会で終始、硬い表情を見せ、
そばに座った他国の外相とも一言も言葉を交わさなかった。
夕食会の前の控え室でも状況は似ていたという。
その1年前にミャンマーで開催されたARFの夕食会では行事の途中に席を外した。
一方、李容浩外相は左側に座ったパキスタン外相、右側に座ったパプアニューギニア外相と談笑した。
貴賓控え室で会った外相とは握手を交わした。

しかし結局は昨年の夕食会と同じ場面が続いた。
夕食会場でケリー米国務長官が李容浩外相が座っているテーブルに近づくと、視線が集まった。
しかしケリー長官は同じテーブルに座っているすべての閣僚と言葉を交わしながらも、
李容浩外相はスルーした。ビショップ豪外相も同じだった。
そばのテーブルに座った中国の王毅外相も、同じテーブルにいたラブロフ露外相も、
李容浩外相には近づかなかった。
李容浩外相は隣の席の外相と言葉を交わすこと以外には、
一人でハラルフード(イスラム法上で食べることが許されている料理)を食べた。
ワインまで一度リフィルしながら。
夕食会の最後も同じだった。
夕食会は議長国の主導で数人の閣僚が舞台で一緒に踊って終わる。
議長国が一緒に踊りたい閣僚を呼び出したりもする。
昨年は尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官が席を外そうとしたが、
マレーシア外相が数回指名し、結局は舞台に立ってASEAN旗を振りながら一緒に踊った。
しかし李洙ヨン前外相も李容浩外相も2年連続、席に座っていた。
誰も一緒に踊ろうと誘わなかったからだ。李容浩外相は途中で席を外した。

李洙ヨン前外相と李容浩外相は違ったが、楽しい雰囲気の伝統音楽が似合わない、
孤立した島のような姿は同じだった。国際社会での北朝鮮の立場をそのまま表すような夕食会だった。


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◎ サンゴの海の守り人-「豊かさ」地球規模で考える  (2016.7.29、日刊工業新聞)

http://www.nikkan.co.jp/articles/view/00394310

 熱帯地方の海の環境指標となる重要な生物はサンゴである。
海水に含まれるプランクトンを餌とするサンゴは、
栄養の源である沿岸域の自然が豊かでなければ成長しない。
「海のゆりかご」とも呼ばれるサンゴ礁は、熱帯雨林とならび
地球上で最も生物多様性の高い場所である。
海洋面積の0.2%ほどしかないサンゴ礁に、およそ4分の1もの海洋生物が暮している。
まさに海の中のオアシスとなっている。

 では世界で最もサンゴが多いとされている海域はどこだろうか。
それはインドネシア、フィリピン、マレーシア、パプアニューギニア、ソロモン諸島、
東ティモールを結んだ「コーラルトライアングル」と呼ばれる三角地帯である。

 赤道に近いこの一帯は熱帯雨林の島々と深い海溝が点在し、
その間を栄養豊かな海流が複雑に流れ込みサンゴを育てている。
「海のアマゾン」とも例えられるこの一帯には、およそ500種のサンゴと
3000種を超える魚たちが暮らしている。

 しかし近年、このサンゴの楽園でさえも海の健康状態が悪化している。
コーラルトライアングルの中の8割を超えるサンゴが絶滅の危機にさらされているのである。
その原因は沿岸域の乱開発や人口増加による海洋汚染、
そしてダイナマイト漁などによる魚の乱獲だ。
サンゴ礁はその地域に暮らす1億人以上の人々の食糧や生活を支えており、
医療や観光業などを含めると世界中に影響を与えかねない大問題なのである。

 そのような深刻な状況の中、サンゴ礁が健全な状態で維持されている数少ない場所が
パプアニューギニアの海である。中でもコーラルトライアングルの最も東に位置する
ビスマルク海のキンベ湾には、世界で見られる半数以上のサンゴが生息している。
しかも地元のダイビングガイドの話では、数年前と比べてもサンゴが減少するどころか
逆に増えている印象を受けるという。

 なぜパプアニューギニア一帯のサンゴ礁は健全な状態を維持し続けているのだろう。
私はその秘密を探るため数年前から毎月のようにパプアニューギニアを訪れ、
海の様子や人々の暮らしを撮影し続けてきた。

 世界で2番目に大きな島、ニューギニア島の東半分と約600の島々に
800以上の部族が暮らすパプアニューギニア。
この地には3万年以上前から人類が生活し、つい半世紀ほど前まで石器時代であったという
正真正銘の最後の秘境である。

 沿岸域にある小さな村を訪れると、どこかノスタルジックな光景に心が和む。
庭先に出されたヤシを削る道具、岸辺に置かれた木造のカヌー、無邪気に裸で海に飛び込む子供たち。
質素な中にどこか人間らしさを思い起こさせる暮らしぶりだ。

 パプアニューギニア人の9割以上はキリスト教を信仰しているが、
沿岸部や山間部の小さな村には自然崇拝も根強く残っている。
これは全てのものに神が宿るという日本に古くから伝わる「ヤオロズノ神」などの考え方に近い。
いまだ手つかずの自然が残るのも、
こうした彼らの信仰に基づく生活様式が残っているからに他ならない。

 船で彼らの暮らす島々をまわると、鬱蒼とした木々の中にまるで隠れ家のように
ひっそりと暮らす人々の姿が印象的である。
美しい緑に覆われた沿岸の風景はパプアニューギニアの特色である。
スキューバダイビングで潜ると、水面を覆う木々をすり抜けた太陽光が木漏れ日となって
海中に降り注ぐ光景に目を奪われる。
それはまさに自然に神が宿っていると感じる瞬間である。

 パプアニューギニア人の食生活からも海洋資源が守られている理由があると私は考えている。
彼らはほとんど魚や肉を食べることがない。
沿岸域に暮らす人々でさえ、せいぜい手こぎの木造船で行くことのできる距離の漁場へ出向き、
テグスで釣れる分しか魚を採ることはない。

 魚や肉を食すのはお祝いの時くらいで、普段はタロイモやバナナ、サゴヤシから
取り出すでんぷんを主食としている。
貴重なタンパク源を採りすぎないように自ら生産できるものだけを
少しずつ自然からいただいているのである。

 一方、東南アジアやアフリカの沿岸などではダイナマイト漁が盛んに行われている。
これはビール瓶などに火薬を詰めて海中で爆発させ失神して浮いた魚を一網打尽とする漁である。
種類を選ばず魚を乱獲して生態系を崩すばかりか、
爆破によって魚の生息場であるサンゴ礁も破壊してしまう。
ダイナマイト漁は世界の多くの国で禁止されている。

 パプアニューギニアではタカラガイなどの貝殻で作られた
装飾品を身につけている人々をよく見かける。
これは「シェルマネー」と呼ばれ、結婚する時の結納金のかわりに渡されたり、
部族間の争いをまとめる時にも使われたりする。パプアニューギニアの人々にとって、
シェルマネーは紙幣では生み出すことのできない海からいただく限りのある貴重な財産であり、
自然とともに暮らす彼らの魂の象徴のようなものなのだ。

 2000年代に入り、パプアニューギニアでは大規模な
LNG(液化天然ガス)開発が進められている。
人口増加や生活の向上などによって世界のエネルギーの消費量は目覚ましく増え続けており、
日本の企業も中心となってLNGビジネスに参画している。

 このような大規模産業の発展は喜ばしい半面、
急速な経済成長による都市部と地方部の格差拡大の問題や、
都市化による自然環境への影響などが危惧されている。
今まさに近代社会と伝統社会の間で揺れているパプアニューギニア。
ラストフロンティアと呼ばれるこの国の未来はどこへ向かっていくのだろう。
彼らの伝統が守りぬいてきたサンゴの海はこの先も大切なことを
私たちに伝えてくれるだろう。


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◎ 石油メジャー、アジア投資 成長市場で買収・増産 (2016.8.1、日経)

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM31H0N_R30C16A7FF8000/

【フランクフルト=加藤貴行、ニューヨーク=稲井創一】

原油安に悩む欧米石油大手がアジアでの企業買収や大型投資に動き出した。
米エクソンモービルはパプアニューギニアで事業展開する企業を買収し、
英BPはインドネシアの天然ガス事業の拡張を決定。
原油価格は2月の底値から持ち直してきた。
投資圧縮の動きは続くものの、需要が伸びる地域には積極的に投資する。 
「やっとエクソンが動き出した」。
業界でこう語られるのが21日にエクソンが発表した買収だ。
対象はパプアニューギニアを拠点にするインターオイル。
世界有数の埋蔵量を誇る天然ガス鉱区の権益を持ち、最大36億ドル(約3800億円)での
買収で両社が合意した。 
パプアは液化天然ガス(LNG)の大消費国である日本や韓国、中国に近く人件費も安い。
エクソンは2020年を予定する生産開始時に現在1バレル50ドル以下の原油価格が
上昇する可能性があるとみて、12年以降で最大の買収に動いた。 
14年から原油価格が下落するなか、業界では再編の胎動はあった。
15年4月には英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが英BGグループの買収を決定。
「原油安でメジャー(国際石油資本)主導の再編が起きる」とみられたが、
原油価格が一段安となり他社は静観を続けた。 
インターオイルは転機が訪れた象徴でもある。
5月にオイルサーチ(パプアニューギニア)が1度は買収を固めた。
オイルサーチと親密なメジャーの一角、仏トタルが側面支援し、
事実上「トタル・オイルサーチ連合」がインターオイルをのみ込みかけたが、
結局エクソンがさらった。 
原油安で資機材価格や人件費も下がっている。
メジャー同士が「底値買い」を狙い、争奪戦に動いている。 
「日本など向けに最も価格競争力があるLNG事業だ」。
BPのボブ・ダドリー最高経営責任者(CEO)は26日の会見で、
拡張を決めたインドネシアのLNG事業「タングー」についてこう胸を張った。 
タングーはBPが主導し、国際石油開発帝石や三菱商事なども参画する。
拡張の投資額は約80億ドルとみられる。
生産量を年380万トン増やして現状の1.5倍にし、アジアの需要を取り込む。 
アジアは世界のLNG需要の4分の3を占め、今後も中国やインドなどの消費量が高まる。
産油国が事業を主導する原油に比べ、多くのプロジェクトはメジャー主導で事業が進む分野だ。 
米シェブロンはエクソンなどとともにカザフスタンの原油生産プロジェクトの拡張を決めた。
投資額は368億ドルを予定し、日量26万バレルを確保する。
中国にもパイプラインで輸送ができるのが利点だ。 ただ原油価格がすぐに反転する可能性は低く、
各社は全体の投資は引き続き圧縮している。
「年間230億ドル超の投資計画を下回るペースで推移している」
(エクソンのジェフ・ウッドベリー・バイスプレジデント)。シェルも緊縮を続ける。
 BPは従来計画した16年の170億ドルを下回る見通しに下方修正し、
17年には150億~170億ドルと過去10年で最低水準まで減らす。
それでも選別しながら新規事業の立ち上げは続ける。
「20年までに新規事業の原油・ガス生産量は日量80万バレル(原油換算)に達する」
(ダドリーCEO)と逆風下の増産に自信を見せる。


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