メルマガ・広報誌

vol.184(4月22日)

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◎ 魚の"顔"鮮やかに大写し 水中写真家・中村征夫さん写真展 壱岐 [長崎県] 
(2019.4.11、西日本新聞)
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/501649/
魚の顔の大写しにこだわる水中写真家、中村征夫さん(73)の写真展「海中顔面博覧会」が、
壱岐市芦辺町の一支国(いきこく)博物館で開かれている。
岩穴から顔をのぞかせる緑の目が印象的なセグメントブレニー。

青色のオトメベラの体とオレンジ色のサンゴ。迫力のある写真が鮮やかな色とともに楽しめる。
6月16日まで。
 中村さんは50年以上、国内外の海の生物を撮ってきた。
東京湾を継続的に撮影することをライフワークにしている。
 今回は沖縄や北海道、パプアニューギニアの海で出合った魚などをとらえた51点を展示。
スキューバダイビングで海中を移動しながら「カメラにぶつかるぐらいの距離」で魚と向き合ったという。
 「1回のダイビングで1時間以上潜って、いい写真が1枚撮れれば成功。
大写しのユニークな顔を楽しんでほしい」と中村さん。
観覧料は一般500円、高校生以下100円。

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◎ [FT]太平洋島しょ国、米中角逐の新たな舞台に(上)  (2019.4.11、日経)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43613220R10C19A4000000/

大きく枝を広げるホウオウボクの木々の下で、
30人以上の男女がジョイス・コノフィリア氏の言葉に熱心に耳を傾けていた。
4月3日に実施されたソロモン諸島の総選挙で立候補していた同氏は、
首都ホニアラを見下ろす丘の中腹の荒れ果てた集落で遊説中だった。
そこでは家に電気が通っている住民は少なく、仕事のある住民はもっと少ない。

だが、オーストラリアで教育を受けた観光コンサルタントのコノフィリア氏が街頭演説を終えると、
聴衆から出た最初の質問は外交に関するものだった。地元の年長者が立ち上がって尋ねた。
「台湾と断交し、中国と国交を結ぶことを支持しますか?」
オーストラリアの北東に位置する人口63万人のソロモン諸島は、貧困や汚職、
そして時おり生じる民族間の対立と格闘している。そして今、
ますます勢いづく中国のあおりを食っている。

中国は、台湾が自国の一部であると主張し、
台湾を孤立させる外交をしかけているのだ。
ソロモン諸島に中国系移民が初めて渡ったのは19世紀で、
それ以来地元の小売部門を独占してきた。ここ数年でその人口は5千人を超え、
地元経済で支配的な地位を確立しようとしている。
中国の国有企業は自国からの融資も活用しながらインフラ整備プロジェクトを手がけているが、
地元民が大いに必要としている雇用をもたらすことはなく、中国人労働者を呼び寄せている。

■第2次世界大戦以来の覇権争い
これと同じようなことが太平洋島しょ国全般で起きている。
日米が衝突した第2次世界大戦から70年以上たった今、
新たな覇権争いが勃発しているのだ。
この広大な海域は長年、米海軍によって支配されてきた。
グアムに構える基地は、同軍が太平洋西部で力を誇示するうえで不可欠だ。
だが、いまや中国が存在感を高めている。

中国政府は、開発支援を約束することで各国を引きつけている。
ただ、それは地元の政治家を潤わせ、新たな植民地的支配という懸念を生む可能性もある。
中国の太平洋における行動を受けて、
西側諸国の政府は中国政府がこの地域への軍事展開をもくろんでいるのではないかという
不安を抱いている。

中国は他地域でも西側諸国の支配を脅かしているが、
太平洋西部ではもくろみが異なるようだ。
この小さな島々は人口が少なく経済的には弱小国である一方、広大な海域を誇る。

中国政府は比較的少額の投資で
この地域のいくつかの国々の政府に影響力を行使できるようになる可能性がある。
そうなれば、米国にとって戦略的に不可欠である広大な海域にアクセスし、
ひいては制海権を握ることさえできるかもしれない。
「ささやかな経済的関与から現地有力者への利益供与まで、あらゆることが起きている。

彼らの狙いは何なのか? 実際、太平洋には中国のもうけになるようなものは何もない」と話すのは、
メルボルンのラ・トローブ大学ラ・トローブ・アジア所長のユアン・グレアム氏だ。
「これは紛争が起きる前の影の戦いであり、
戦闘を伴わない地政学的なアイランドホッピング(飛び石作戦)だ。

第2次世界大戦以来初めて、太平洋が再び戦略的に重視されるようになっている」
大国間の衝突の最前線に再び巻き込まれるのは、ソロモン諸島の人々にとって不愉快な現実だ。
第2次世界大戦中に米国が日本への反撃を本格的に開始したのは、ガダルカナル島でのことだった。
同島の北方に位置する海峡、アイアンボトム・サウンドの海底には軍艦の残骸が散乱している。

■我々自身の戦争ではなかった
「昔と似たような状況が再現されつつある」と、
政界の有力者である部族長のリリアナ・フィリスア氏は言う。
「あれは我々自身の戦争ではなかった。
他の国がガダルカナル島にやってきて、我々が犠牲になった。
今、再び第三国同士の争いが起きている。
今度は中国対米国で、我々は中国の力を実感しており、その影響が地域に及び始めている」

米政府にとって最も差し迫った懸念は、中国がパラオやミクロネシア連邦、
マーシャル諸島で影響力を拡大しようとしていることだ。

こうした極小国は、米国といわゆる自由連合盟約(COFA)を結んでいる。
これらの国々はCOFAにより補助金を受け取り、市民がビザ無しでの米国居住権を得る一方で、
米軍の駐留を受け入れ、他国軍の基地を認めないことになっている。

マーシャル諸島では、中国人投資家のキャリー・ヤン氏が
ロンゲラップ島に大量の土地を賃借している。
同島は、米国のビキニ水爆実験で最も深刻な被害を受けた環礁だ。
ヤン氏は経済特別区を設けることを提案しており、同氏の経営する会社によると、
特区の住民にはマーシャル諸島のパスポートが交付されるという。
まだ建設は始まっていないが、
米国の居住権を取得できる方法としてこの提案を中国の投資家に売り込んでいる。

これが政治において予想外の事態を招いた。
この計画の支持者が昨年、ヒルダ・ハイネ大統領を親中派に交代させるべく
不信任決議案を提出したのだ。
ハイネ氏は僅差で大統領の座を守った。
また、ミクロネシア連邦の一部であるチューク州では、
中国人投資家を相手に土地を取引している地元の政治家らが独立運動を推進している。
実現すれば、ミクロネシア連邦の米国との盟約が破綻し、
中国が軍事展開のチャンスを手に入れるかもしれない。
パラオでは、中国のパートナーとホテル建設計画を推進しているサビノ・アナスタシオ議会議長が、
国交を台湾から中国へ切り替えることを主張するようになった。

■中国の海洋調査船の役割
中国は以上のような関係を築くだけでなく、
こうした島国の周辺やグアム近辺の海域で海洋調査船を頻繁に行き来させている。
グアムでは、米海軍が太平洋西部を巡回する潜水艦を係留させている。
中国の海洋調査船は海底をマッピングし、海洋生物や気候パターンを観察している。
また、ブイやセンサーを設置して水中の場所による音の伝わり方の違いを記録している。
「主な目的は海底鉱物探査だが、軍事的な狙いもあるのは明らかだ」と、
中国の専門家である米国海軍大学のライアン・マーティンソン氏は話す。
「こうした調査船の活動は、米中の潜水艦の武力衝突が起こりうる海域に集中している」

中国人民解放軍は、特に台湾や南シナ海など「核心的利益」ととらえている海域において
米軍が紛争に介入してくるのを防ぐため、
いわゆる「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」体制を整えつつある。

中国の専門家である英国際戦略研究所のアレックス・ニール氏は、
「現在、A2ADの拡張を加速している」と言う。「中国は海上の核抑止力を機能させるために、
こうした海域を航行する能力を高める必要に迫られている」

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◎ [FT]太平洋島しょ国、米中角逐の新たな舞台に(下)  (2019.4.22、日経)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43664190S9A410C1000000/
南太平洋での中国の動向に米国も注目し始めている。米政府は今年1月、
共同基地をパプアニューギニアのマヌス島に開設することでオーストラリアと合意した。
南太平洋諸国最大の中国人口を抱えるパプアニューギニアは
中国政府から巨額の経済援助を受けており、中国の影響力が大きい。
一方で米国は自由連合盟約(COFA)を結んだ国々への資金援助を増やし、
台湾から中国に国交を切り替えないよう各国の指導者に呼びかけている。
しかし、南太平洋の国々が地政学的な駆け引きに巻き込まれたいわけではない。
「太平洋島しょ国は、米中どちらに付くかの選択を迫られる状況を避けたい。
オーストラリアですら、中国とも協力し続けたいと考えている」と
オーストラリアの元在ソロモン諸島高等弁務官、ジェームズ・バトリー氏は話す。

中国の太平洋島しょ国に対する開発援助総額は、同国の対外援助予算の4%にすぎないが、
中国政府のその予算の使い方は戦略的だ。シンクタンクの豪ローウィー研究所によると、
中国はインフラ整備に投資を集中しており、
その事業規模は概して他国が投資するプロジェクトよりもはるかに大きい。
中国はフィジーの06年の軍事クーデターを受け、軍事政権を孤立させようとする地域の国々の足並みを乱した。
フィジーの新たな統治者を支持しただけでなく、
2年間で援助額を100万ドル(約1億1100万円)から1億6100万ドルに増額した。
フィジーはそれ以来、太平洋諸島フォーラム(PIF)を脇に追いやるべく地域の取り組みを推進している。
PIFには従来南太平洋地域で影響力を持つ米同盟国であるオーストラリアとニュージーランドが加盟している。
中国はバヌアツの首都ポートビラなど深水港の開発を援助している。
豪政府は、中国がそれらの施設を海軍基地として利用する可能性を懸念している。

「それらの港に中国が戦略的意図を持っているという見方で豪政府内は一致している。
たとえ中国がこの地域に基地を開設する確率が10%にすぎなかったとしても、
もしそうなればオーストラリアへの影響は非常に大きいため、対応する理由は十分にある。
海路で太平洋を横断してアメリカに向かうには、通過点のバヌアツ、フィジー、
ソロモン諸島は要衝となる」とグレアム氏はいう。

■ソロモン諸島の海底ケーブルに華為
一方、ソロモン諸島政府は16年、ソロモン諸島とシドニーを結ぶ海底ケーブル敷設事業をめぐり、
オーストラリアの後援を受けて一般競争入札で選ばれたベンダーを中国の華為技術(ファーウェイ)に差し替え、
豪政府に衝撃を与えた。
多くの西側諸国はファーウェイを安全保障上の脅威とみなしている。
豪政府は自らソロモン諸島とを結ぶ海底ケーブルを敷設することで対応、
コストの3分の2を負担した。
しかし、ファーウェイも引き下がってはいない。今度はバヌアツから海底ケーブルを引き、
ソロモン諸島の地方部と結ぶことを提案している。
豪政府は反対はしないとしているが、ソロモン諸島が中国から融資を受けた場合、
危険な「債務のわな」に陥る危険があると警告している。

■人工衛星で中国介入招くトンガ
トンガは実際、中国マネーの影響で同国政府に依存している。
中国人民解放軍関連企業のチャイナ・エレクトロニック・システムズ・エンジニアリング(CESEC)は現在、
トンガで裁判にかけられている。同社は08年、トンガ上空に人工衛星を配置し、
トンガのピロレブ王女が経営する企業「トンガサット」に5000万ドルを支払った。
トンガの裁判所文書によると、その半分はトンガの国庫に入るべきだったが、
実際はトンガサットが大部分を受け取った。
トンガは08~10年の間に、中国から1億1400万ドルを借り入れた。
中国への債務は国内総生産(GDP)の43%に上る。トンガ王室はその後、

ピロレブ王女批判の急先鋒(せんぽう)であるアキリシ・ポヒバ首相を捜査している。
ポヒバ氏は、自分を追いやり、代わりに親中派の人物に首相を据える狙いだと訴える。
南太平洋地域における中国の動向を専門とするアン・マリー・ブレイディ氏によると、
同政府のトンガとの関わりは非常に戦略的だ。「南太平洋諸国は軍事的にきわめて重要だ。
中国の衛星測位システム『北斗衛星導航系統』ではミサイルを誘導、発射、管理するため、
人工衛星を配置する場所が必要だ」とブレイディ氏は言う。

■債務のわな
ソロモン諸島の首都、ホニアラでは、トンガの前例は警鐘として受け止められている。
「トンガの事例、スリランカやモルディブの事例を見てきた。つまり、
巨額融資や債務のわなだ。我々の国はとても小さく、主権を失いかねないため、
慎重にしなければならない」とソロモン諸島で強い政治力を持つ部族長のリリアナ・フィリスア氏は言う。
しかし中国のコネは強い。4月3日に実施されたソロモン諸島の総選挙(政権発足は月末になる見通し)では、
中国政府の資金は大きな影響力を発揮した。ある議員やホニアラ在住の中国人経営者によると、中国の国有企業、
中国土木工程集団(CCECC)は中国政府が地元の政治家に資金を流す役目を果たしている。この2人の情報によると、
マナセ・ソガバレ前首相は議員に再選されるための資金として、CCECCから献金を受け取った。
ソガバレ氏はこの件でコメントに応じなかった。
4月の総選挙に立候補した観光コンサルタントのジョイス・コノフィリア氏は昨年、
中国政府の招待で同国を2週間訪問した。同氏の言葉は、
中国国民を貧困から脱出させた中国共産党への称賛に満ちている。
「彼らは人民に力を与えている」と話し、ソロモン諸島を変革するために中国の支援を期待すると訴えた。
しかしソロモン諸島の住民の間では、中国人移民が増え、彼らの経済力が高まっていることに対して、
怒りが蓄積している。
コノフィリア氏は中国政府を称賛しつつも、多くの産業で中国の投資家を排除することを宣言している。
「もうこれ以上、よその人々に干渉されたくない。我々の人生を生きたい。どうか放っておいてほしい!」


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◎ 「生き恥をさらした......」パプアで多くの命を救った日本人 "ビッグマン" 波瀾万丈の人生 
(2019.4.23、テレ東プラス)
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/lifestyle/entry/2019/019276.html

世界で活躍する知られざる日本人を取材し、ナゼそこで働くのか、
ナゼそこに住み続けるのかという理由を波瀾万丈な人生ドラマと共に紐解いていく
世界ナゼそこに?日本人~知られざる波瀾万丈伝~」(毎週月曜夜9時)。
「テレ東プラス」では、毎回放送した感動ストーリーを紹介していく。

今回は、パプアニューギニアで多くの命を救い、
「ビッグマン」と呼ばれる日本人男性にスポットを当てる。
惜しまれながら92歳でこの世を去った彼を、番組では生前に取材していた。
英雄と称される一方で「生き恥をさらした」と語る、その波瀾万丈の人生とは?
パプアニューギニアは日本の真南にある、太平洋に浮かぶ島国。800を越える部族が存在し、
大自然の中で昔ながらの生活を続ける人々も多く、地球最後の秘境の国とも言われている。
今回探す日本人が住むウエワクは、首都ポートモレスビーから約770キロ離れた辺境の町。
まずはウエワクで、有名な日本人について聞き込みを始めると、誰もが「ビッグマン」と口を揃える。
パプアでは、尊敬に値する人を「ビッグマン」と呼ぶのだという。
さらに聞き込みを続け、日本人のお宅を発見。警備員に「ビッグマンに会いたい」と取り次いでもらい、
現れたのは川畑静さん(当時91歳)。川畑さんはパプアに移住して33年。
住まいは、自身がオーナーを務めるニューウエワクホテルの一角だ。

午前10時。川畑さんの一日は、朝食から始まる。この日は好物の焼きおにぎりと、日本で買った梅干し。
「日本に次行ったら、水木さんのお墓参りせなあかんな」
『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる水木しげるさんとは旧知の仲。実は水木さん、
生前は何度もニューウエワクホテルを訪れ、「ウエワクの帝国ホテル」と呼んで気に入っていたのだ。

川畑さんが移住したのは33年前だが、ニューウエワクホテルは50年以上続く老舗。30人の従業員は皆、
貧困から抜け出すきっかけを作ってくれた川畑さんに感謝している。
「他人の作った借金があるこのホテルを立て直したの」と教えてくれたのは、川畑さんの娘・ミハルさん(29歳)。
当時のお金で5000万円、現在の金額にして1億円の借金を肩代わりした川畑さんは、
時には宿泊客の残り物を食事にして、運転手兼コック兼案内人として働き、20年かけて完済したのだ。
そんな川畑さんは、街に出ればいろいろな人に声をかけられる。この日の夜は、州知事夫妻と会食。
パプアの人々から尊敬される川畑さんだが、なぜパプアに来ることになったのか?

1926年(大正15年)、長崎県佐世保に生まれた川畑さん。
遠洋航海に行っていた父は、海外でカメラをよく買ってきてくれた。
少年時代に父から手ほどきを受け、カメラが好きになったという。
川畑さんは、家族を守るために自ら戦線に出るしかないと、学校を中退して海軍に志願。
18歳で海軍予科練に入隊した川畑さんは、人間魚雷"回天"の乗組員として配属された。
人間魚雷とは、爆破のみの魚雷を改造し、ミサイルの中に魚雷を操縦する運転席を作ったもの。
命と引き換えに、そのまま敵艦に体当たりするという残酷な兵器だ。

敵艦に命中すれば必ず死が。
命中しなかった場合も、脱出装置はなく酸素は4時間しか持たないため、酸欠で苦しみながら死を待つ。
それでも当時の川畑さんに迷いはなかったという。
乗組員として集められた100人の若者は、過酷な訓練を終えると次々に戦場へ。
そしてついに川畑さんに出撃命令が。だが、出撃6日前の1945年8月15日、日本の降伏により太平洋戦争が終結。
生き残った嬉しさよりも、死んで行った仲間たちに申し訳ない気持ちでいっぱいだったという川畑さん。
生き恥をさらすくらいなら、自決しようと考えたこともあったという。

そんな川畑さんを救ったのがカメラだった。亡くなった仲間にカメラで未来を見せてやる、
カメラと共に生きていくことを決意したのだ。
特攻訓練で鍛えた度胸を武器に、川畑さんは危険な場所や過酷な現場もお構いなしの、
売れっ子報道カメラマンになった。当時若手記者だったTBSの元キャスター・筑紫哲也さんも認める存在だったという。

カメラマンとしてパプアに赴いた川畑さんは、ひょんなことから知り合いに頼まれ、
借金まみれのホテルの再建を引き受けることに。カメラマンを辞めパプアに移住して14年後、
川畑さんが72歳の時にある悲劇が起きる。

1998年、高さ15メートル、幅30キロの大津波が、川畑さんの住む隣町アイタペを襲った
死者2000人以上の大災害だ。

川畑さんは自身のホテルを無償で提供。
やがて被災地の近くにあった川畑さんのホテルは、海外からの緊急援助隊の拠点に。
日本からの救援物資もホテルに到着したが、なぜか必要とする人々のところに届かない...。
道路が寸断され、物資を運べる状況ではなかったのだ。
この緊急事態に、なんと川畑さんは飛行機を持っていた隣国オーストラリア軍に個人で直談判!
日本からの救援物資を、空路で被災地に送り始めたのだ。
この行動のおかげで、食料や飲み水、毛布といった物資が行き渡り、多くの人々の命が救われた。
異国の人間が、現地の人々のため無償で働き続ける。
その姿を見た人々は尊敬と愛情を込め「ビッグマン」と呼ぶようになったのだという。
ホテル経営のかたわら、戦争で亡くなった人々の魂を弔いたいと、
パプアに眠る日本兵の遺骨捜索の活動も始めていた川畑さん。
その縁で、安倍総理が日本兵の慰霊に訪れた際、川畑さんが案内人に抜擢された。

この時川畑さんは総理に「パプアの地に眠る日本兵のことを忘れないでいてほしい」と訴えた。
その様子はパプアの全国紙の一面に載り、
より多くの現地の人々が川畑さんの存在を知るようになったのだ。
川畑さんが亡くなるまで必ず訪れていた場所、ピースパーク。
日本兵を慰霊するために造られた公園だ。
パプアの発展を願う川畑さんは、パプアの若者が農業を学べるように自ら日本に連れて行くなど、
両国の橋渡しとなる活動も続けた。

パプアニューギニアには、天災から多くの人々の命を救い、
現地の人々から「ビッグマン」と呼ばれた日本人がいた。


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